私は天使なんかじゃない






旅は道連れ世は情け








  人は繋がっている。





  バイクで一路カンタベリー・コモンズに向かう。
  旧ユニオンテンプル本部から南に位置する交易都市。
  キャピタル・ウェイストランドを巡回しているキャラバン隊の拠点であり、現在メガトン共同体に属している街でもある。
  向かう理由。
  ケリィのおっさんがデスにやられたからだ。
  出血が激しい。
  元々メガトンを発つときに持っていた物資の大半は不気味な食堂でストレンジャーのグールが乗っていた警戒ロボのミサイル攻撃でパトカーごと粉砕されてしまった。
  たまたまMr.クロウリーがスティムパックを持っていたから致命傷ではなくなったが傷は完全には癒えていない。
  瀕死から緩やかな死へと変わっただけだ。
  もちろんそれでいい。
  猶予が出来た。
  俺はベンジーと2ケツしてカンタベリー・コモンズへと向かっている。
  2人もいらん?
  だろうな。
  だがメガトンを出てから災難続きだ。
  どこで襲撃があるか分かったもんじゃない。攻撃要員は必要だ。
  街に着いたらベンジー降ろして、Dr.ホフとかいう奴を連れて戻る。誰だかは知らん。Mr.クロウリーご推薦の人物だ。結構名が通った医者なのだろう、たぶんな。
  そいつがいない場合は医療品をゲットして戻る。
  俺たちは急ぐ。
  バイクは限界までパワーを引き出している。



  バイクを走らせて30分。
  何やら自販機が立ち並んだ場所が目に飛び込んでくる。
  等間隔で並んでいる。
  一メートル間隔に自販機が沢山並んでいるが……ああ、これが何でも屋のジョーが言ってた自販機パラダイスか。
  なるほど。
  自販機が沢山あるな。
  「ボス、何だあれ? あれが自販機パラダイスなのか?」
  「たぶんな。寄りたいところだが忙しいし素通りだ」
  「そうだな」
  「うおっ!」

  キキキキキキキキキキっ。

  急ブレーキ。
  「ボスっ!」
  「わりぃ。子供が寝てる……と思ったんだよ、だけどこれは……」
  バイクの前に、倒れている子供?
  ピクリとも動かない。
  死んでいるのだろう。胸元に穴が開いている。銃で撃たれたようだ。気付けば死体は一つではない、他にも転がっている。
  「何だ、これ」
  銀色のピチピチの服を着た……子供の死体?
  いくつか転がっている。
  5、いや、6だ。
  ……。
  ……だが、これは子供か?
  頭が異様にでかい。
  目もだ。
  そもそも肌の色合いが人間じゃない。
  スーパーミュータントの小型版か?
  ただ、フォルムはスーパーミュータントではない。別種なのか亜種なのか。
  ベンジーが呟いた。
  「エイリアンか、これ」
  「えいりあん?」
  何だそりゃ。
  つまりこれは宇宙人って奴か?
  俺の怪訝そうな顔を見たからだろう、ベンジーは苦笑いをした。
  「別に信じてるわけじゃない、ただ、一般的なエイリアン像に似ているだけだよ。……パターソン大尉やサリーとかいう少女の言葉が正しいなら、俺はこいつらにさらわれたことになるのかな」
  「はっ?」
  たまに言っていることが分からん。
  まあいい。

  ばぁん。

  銃声。
  バイクから転げ落ちるように俺たちは伏せる。
  バイクが倒れた。
  あー、傷がーっ!
  次の攻撃に備える。俺たちが手にしているのは9oと10oの単発銃。距離や威力に制限があるが仕方ない。
  「あそこだ」
  ベンジーが伏せながら指差す。
  自販機パラダイスの方だ。
  ゴーグルをした、赤髪の奴がスナイパーライフルを構えているのが目に入った。レザーアーマーを着ている。その脇には白衣を着た小柄な奴と、バラモンスキンの服を着た大柄の男がいる。
  白衣の奴は10oサブマシンガン、大柄な奴はスレッジハンマーを持っている。
  そしてその後ろには小太りの奴がいた。
  小太りは戦闘要員ではないようだ。
  何というか素人だ。
  スナイパーライフルを覗き込んでいる男は突然銃を下し、こちらに向かって手を振った。
  何か叫んでいる。

  「すまんすまん、小さいミュータントだと思ったんだ、悪かったっ!」

  誤解で撃ったらしい。
  向こうは警戒を解いている。
  不意打ちするつもりか?
  かもな。
  だが別に不意打ちしなくても武器の特性上向こうが有利だった。不意打ちする頭があるなら、それぐらい分かってるはずだ。わざわざ騙す必要はあるまい。
  「どうする、ボス」
  「一応言い訳を聞こうぜ」
  バイクを起こして乗る。
  2分で連中のところに到着。小太りの奴はゴーグルの奴に何か言ってから自販機パラダイスの方に走って行った。

  「らーめん缶をたらふく食べるぞー」

  はあ?
  らーめん缶って何だ?
  どうやら小太りの奴はそれが目当てらしい。じゃあこの三人組は護衛ってところか?
  傭兵ってわけか。
  「すまんすまん、間違えて撃っちまった。許してほしい」
  「当たってたら許さないけどな。あいつは何だ? らーめん缶って?」
  「どっかの自称グルメだ。護衛が俺たちの仕事なんだ。この辺りは小さいミュータントが最近わんさかいるんだ、護衛が必要な地点なんだよ。らーめん缶っていうのは戦前の食べ
  物らしい。どっかの島国が作った食いもんなんだとさ。自販機パラダイスは金入れなくても出てくるんだ、不思議だよな」
  「不思議というか不気味だな」
  「俺もそう思うよ。ロエ市長はそもそも近づくことも禁止しているからな。まあ、俺たちは依頼で近付いちまってるけど」
  「ふぅん」
  話は打ち切りでいいだろう。
  さっさとカンタベリー・コモンズに行かなきゃな。
  「俺はイッチ、そこのでかいのが弟のニールで、白衣着ているのがサンポスだ。この近辺でハンターしてるんだ。まあ、傭兵だな。カンタベリー・コモンズが拠点だよ」
  「そうか」
  素っ気ないだろうが仕方ない。
  今は急いでいる。
  イッチは空気読めないのか、ただ単に喋りたいだけなのか……ああ、じゃあ空気読めないのか、ともかく話し続ける。
  ベンジーが俺の皮ジャンの袖を引く。
  分かってるよ。
  切り上げるとしよう。
  「悪いが……」
  「最近この辺りに小さいミュータントが現れたんだ、自販機パラダイスが現れたと同時にな。もしかしたら、地球侵略しに来た宇宙人が拉致った人類に反撃を受けて宇宙船は奪われ、討伐に
  来た別の母艦も撃墜され、生き残った宇宙人どもが人類への復讐の為に自販機パラダイスを作ったのかもな。ははは、どうだ、すげぇ仮説だろ?」
  「そりゃすごい」
  半分も聞いてない。
  バイクのエンジン切ってない。
  行くとしよう。
  「じゃあな」
  「急ぐのか? 何があった?」
  言わなきゃダメか?
  空気読め。
  空気。
  「えっと、誰だっけ?」
  「ブッチ・デロリアだ」
  「そうか、よろしくな」
  「怪我人がいるんだよ、カンタベリー・コモンズに行って医者か医療品をゲットして、戻らなきゃいけないんだよ。じゃあな」
  「怪我人? じゃあサンポスに任せればいい。医者だ」
  「マジか」
  サンポス。
  白衣を着た、どこか童顔な印象を残している。
  なるほど。
  あれはただのファッションではないのか。
  戦いで汚れた白衣に10oサブマシンガン持ちだからファッションだと思ってたぜ。となるとあの背負ったカバンには医療品が入っているのか。
  「頼めるのか?」
  「構わんよ。依頼として受けるからな。なに、手間賃だけくれりゃいいさ。100キャップでいいよ。で? 容態はどんな感じだ?」
  「腹を刺された。スティムパックを投与したが薬が足りない。血も足りない」
  100キャップを渡す。
  そんなに裕福でもないがこれぐらいの金は持ってる。
  「サンポス、行けるか?」
  「分かったよイッチ兄さん。血液型を調べるキットもカバンの中に常備しているし問題ないと思うよ」
  「よし。ニール、サンポスの護衛として付き添ってくれ。人狩り師団がうろついているしな」
  「あいよ」
  「それで場所はどこだ?」
  「旧ユニオンテンプル本部だ」
  「分かった。じゃあお前ら頼む。俺は依頼人……あれ、いない……?」
  周囲を見渡すニッチ。
  依頼人、さっきの小太りの奴か。
  確かにいないな。
  「ニール、サンポス、急いで患者のとこに行け。護衛を頼んできたグルメな依頼人は探しとく。やれやれ、どこに行ったのやら」
  2人は荒野へと歩き去って行く。
  この近辺を拠点にしているのなら庭みたいなものなのだろう。
  俺は改めてイッチに頭を下げた。
  「助かった」
  「いいさ、仕事だからな。それにしても……どこに行ったんだ、あの依頼人」
  「確かにな」
  バイクのエンジンを切る。
  ミッション終了と受け取ってもいいだろう。
  ベンジーが耳元で囁く。
  「任せるのは任せるとして、一応Dr.ホフとかいう奴にも当たった方がいいんじゃないのか?」
  「ああ、分かってる。ニッチ、悪いが俺たちは……おいおいっ!」
  視界に飛び込んでくる。
  ……。
  ……わざわざ見なくてもいいものがな。
  くそ。
  何だって俺の目はこんなものを見るんだろうな。
  飛び込んできたのは無数に立ち並ぶ自販機群の中で倒れ伏す下半身。俺たちは駆け寄ってみる。
  上半身はない。
  どこにもない。
  さっきの小太りの奴のズボンに酷似している。
  いや。
  この状況だ、限りなくさっきの奴だろう。
  死んでるかって?
  わざわざ言うまでもない。
  「な、何だ、これ」
  イッチは動揺する。
  無理もない。
  いきなり死体になっちまったんだからな。
  治療の要請をしたのがわずか五分程度、その間に依頼人は下半身だけになっちまった。悲鳴もなく、あっという間に。
  誰かいるのか、ここに?
  「人狩り師団」
  俺が何気なく呟くとイッチは否定した。
  「あいつらは人をばらして売ったり、誘拐したり密売したり、まあ、どんな犯罪でも手を出す屑どもだが……こんな意味不明なことはしないぞ。金にならないことはしないんだ」
  「実はこいつが賞金首だったり」
  「それでも、おかしいだろ、俺たちは殺される現場も殺した奴も見てないんだからな」
  「確かにな」
  「……上半身はどこ行ったんだ、引きちぎったのか? 何か気味悪いな。俺もニールとサンポスを追うよ、サンポスが手に負えない場合は搬送する人手が欲しいだろうしな」
  「ああ、任せる」
  「あんたらは?」
  「その手に負えない場合を考慮して、カンタベリー・コモンズに向かうぜ」
  「分かった。気を付けてな」
  「あんたもな」
  エンジンをかける。
  バイクは爆音を立ててカンタベリー・コモンズに向かう。



  カンタベリー・コモンズに到着。
  これが交易都市?
  ふぅん。
  特に目ぼしいものはない。
  閑散としてる。
  街というよりはキャラバン隊の補給や休息の拠点という意味合いが強いのかもしれない。
  「エンジンを止めろ」
  「あいよ」
  ハゲの警備兵らしき男に街の入り口で止められる。女性の警備兵と他にも数名を連れている。
  警備隊長ってところか。
  エンジンを切る。
  「俺はドミニクだ、こっちが副官のマチーテ」
  「マチーテ」
  「……何か?」
  「お構いなく」
  マチェットの名前と似てたから反応しちまった。
  「この街には何の用だ?」
  「補給と医療品……いや、Dr.ホフはいるか?」
  「Dr.ホフ?」
  「ああ」
  「あいつはさっき旅立って行ったぞ」
  「旅って……」
  いないのかよっ!
  「あいつは医療品専門のキャラバン隊を仕切ってるんだ、別にこの街の専属医ってわけじゃないから、毎日いるわけじゃない」
  「なあ、サンポスって知ってるか?」
  「あいつはこの街出身の傭兵3兄弟の末弟だな。あいつも今は……」
  「それは知ってる。俺が聞きたいのは医療の腕だ。その3兄弟にさっき会って、急患の所に行ってもらったんだ」
  「ああ、そういうことか。なら問題ない。サンポスはDr.ホフに師事してた奴だ。医療の腕は太鼓判だよ」
  「そうか」
  なら問題なしか。
  ベンジーの顔にも安堵が浮かんでいた。
  「質問は終わりか? 満足か?」
  「ああ。サンキュな」
  「で、どうする?」
  「補給とかしたい。……というか、立ち入りに許可がいるのか?」
  「いりはしないさ。だが面倒な奴もたまにいるからな、一応様子見として質問とかしてるのさ。カンタベリー・コモンズにようこそ、歓迎するよ。もっともここはキャラバン隊の出入りが
  多いだけで大した私設はないがね。飲み食いしたいならジョー・ポーターの店に行きな。取引したいなら商人に言いな。以上だ」
  「分かったぜ」
  俺はバイクを押して歩き出す。
  ふと思う。
  「そうだ、聞きたいことがあるんだが」
  「何だ?」
  「バイクの整備とかして欲しいんだが、それも商人に頼めばいいのか?」
  「バイクか、南にあるロボットショップに行きな。メカニストって奴がいる。本名は……まあ、いいか。俺の紹介があるって言えば割り引いてくれるよ」
  「ありがとな。ベンジー、お前は弾丸とか武器とか購入しといてくれ」
  手持ちの金の半分を渡す。
  300キャップ。
  中古品の武器なら1丁ぐらい買えるだろ、弾丸付きで。
  残りの半分でバイクの整備だ。
  ガソリンも入れなきゃな。
  ……。
  ……これで全財産が吹っ飛ぶ。
  あー、また用心棒のバイトしなきゃな。
  「じゃあまた後でな、ベンジー」
  「了解だ」
  ベンジーと別れて俺はロボットショップに向かう。
  それなりに離れているらしい。
  街の中にあるってわけではないようだ。
  エンジン掛けてバイクを走らせる。
  南にあるその施設に着いたのは7分後。
  「ここか」
  バイクを止めて、俺は降りる。
  建物の扉を開けた。
  「アンタゴナイザーっ! ……あー、すまん、違うな」
  「……」
  どきどき。
  ビビったぜ。
  「心臓が踊ったろうがっ!」
  「すまんすまん」
  ロボットのコスチュームを着た妙な奴がいる。そいつがいきなり抱きついてきたってわけだ。
  こいつがメカニスト?
  「バイクの修理を頼みたいんだが、修理というか、メンテ」
  盛大にパトカーでぶつけたしな。
  「あとガソリンあるか? 入れて欲しいんだが。……あー、ドミニクの紹介有りだ」
  「……」
  「どうした?」
  「すまんな、アンタゴナイザーがいなくなったんだ。それで気が滅入っている」
  「恋人か?」
  「ば、馬鹿野郎っ!」
  怒鳴っているが声は嬉しげだ。
  恋人かよ。
  くそ。
  リア充め、爆ぜろっ!
  「リーチェン、メンテ頼む。俺は少し休む」
  「了解です」
  奥から白い作業着を着た男が奥から出て来た。
  従業員か。
  「あー、こりゃいい代物ですねー」
  「だろ?」
  「ガンスリンガーさんの愛用のバイクですもんね」
  「はっ?」
  「動くな。動いてもいいけどな、どのみち死ぬわけだし」

  ばっ。

  作業着を開いて、その下を見せる。
  ご丁寧に爆薬だ。
  手には起爆装置を握っている。
  「ハイウェイマン」
  見覚えがある。
  ストレンジャーだ。
  「待ち伏せか」
  「違う。この街出身だからな、だが来たら差し違える覚悟はあったよ。これがその証ってわけだ。あんたも動くな、このコスプレ野郎っ! 前から嫌いだったんだっ!」
  「ハイウェイマン、自爆するつもりか?」
  「仕方ないだろ、マシーナリーに爆弾括り付けられてここに放置されたんだっ! 来たら自爆しろとよっ! 取り外しもできない、だったら道連れにするしかないだろっ!」
  「そりゃ失礼」
  人間爆弾かよ。
  やべぇな、ストレンジャー。
  仲間は使い捨てか。

  「<Beep音>」

  赤い閃光がハイウェイマンの頭を貫く。
  融解。
  俺は慌てて、頭がなくなって倒れるハイウェイマンの体を抱きとめ、そして起爆装置を奪い取る。
  ……。
  ……爆発は、してないか。
  まあ、してたら即座に死ぬわけだが。
  「すぐに解体するっ!」
  「頼む」
  施設に戻り、すぐに工具を持ってきたメカニストは爆弾の解体を始める。
  というか何故ここにED-Eがいるんだ?
  軽やかな音楽を鳴らしながら飛んでいる。別の機体かと思ったが、こんなに強力なのがごろごろしてるわけない。何より俺の周りを楽しげに飛んでいる。
  「どうしたんだ、これ」
  「街の近くに墜落してた。誰かに狙撃されたらしい。クレイジー・ウルフギャングが拾って持ち込んだんだよ。あんたのかい?」
  「俺のダチのだ」
  「そうか、じゃあ返すよ。ところでストレンジャーって何だ?」
  「西海岸の傭兵団だ。こいつもそうらしい。あー、キャピタル支隊っていうカテゴリーみたいだが。詳しくは俺も知らない。従業員だったんだろ、付き合いは長いのかい?」
  「随分前に街を出て行った奴だ。修理工の腕があるから雇ったんだ。とはいえ別に面識はそんなになかったけどな」
  「ふぅん」
  「……なあ、あんたはストレンジャーの居場所って知っているのか?」
  「何で?」
  「アンタゴナイザーが姿を消す前にストレンジャーのことを聞いて回っていたらしい。関わりがあるのかもしれない。あいつは俺と同じ正義のヒーローだ、厄介に関わっているなら助けてやりたいんだよ」
  「そうか」
  何とかしてやりたい。
  何とかしてやりたいが俺も手掛かりがなくなった状態だ。
  ED-Eがピーピーと音を鳴らしている。
  注意を引きたいようだ。
  ……。
  ……待てよ?
  「まさか場所が分かるのか?」
  「<BEEP音>」
  分かると判断しよう。
  旅は道連れ世は情けってね。
  「一緒に行くか? たぶん、トロイもそこにいる」
  「<BEEP音>」
  「よっしゃ。メカニスト、あんたも行くか?」
  「ああ。行くよ。一緒に来てくれるなら心強い。それでー……そのPIPBOYだが……あんたもしかしてボルト出身者か?
  「何となく言いたいことは分かる、赤毛の冒険者の仲間くかって聞きたいんだろ?」
  最近よくある展開だ。
  「昔馴染みだ」
  「おお、コマンダー・ルージュのお仲間さんかっ!」
  「はあ?」
  コマンダー・ルージュ?
  その呼称は新しいな。
  初めて聞いた。
  「彼女は俺とアンタゴナイザーを導いてくれた人でな、現にキャピタルで一番のヒーローだ。そうか、昔馴染みか、羨ましい限りだ」
  「そういうもんか?」
  感覚が分からん。
  まあいい。
  「行こうぜ、メカニスト。街に俺の仲間もいる。旅は道連れ世は情けってね」
  「行こう。本日も正義の味方に栄光あれっ!」






  グレイディッチ。
  地下。
  Dr.レスコから借り受けた、ボマーの部屋。その会話。
  「ボマー」
  「どうした、バンシー」
  「この近辺の、稼働可能な地上の監視カメラを全てスキャンしましたが……」
  「誰かいるのか?」
  「いえ。ただ、妙な予感はあります」
  「予感」
  「何の裏付けもない、私のただの予感ではありますが……」
  「お前の予感は当たるからな。どうやら長い一日になりそうだな。デスも帰還した、今日は確かに何かあるのかもな。メンバーたちに戦闘準備を通達しておけ」
  「了解しました」